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help RSS 菊池寛 「恩讐の彼方に」

<<   作成日時 : 2008/07/26 18:46   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 1


私はあまり文学のたしなみがないのですが、
大分県北西部にある景勝地・耶馬溪の案内本などを見ていると
しばしば 「・・・菊池寛の『恩讐の彼方に』で有名な 青の洞門・・・」という紹介文を目にします。

耶馬溪は、紅葉の季節がハイシーズン。
今年こそは訪れたい場所なのですが、その前に、『恩讐の彼方に』を読んでみよう
と思い立ち、これまた大分駅前フォーラス内のジュンク堂で購入しました。

読んだことのある人にとっては、今更何を、と思われると思いますが、
読後の感想: 素晴らしい!

感動して涙を流しました。

青の洞門、とは、耶馬溪にある、江戸時代に堀りあけられた長さ300mを超えるトンネルです。
このトンネルがなかった時代は、その断崖絶壁沿いに橋がかけられており、
一年に10人はその橋から落ちて命を落としていた難所だったという。

物語は、このトンネルを掘った僧・了海が主人公です。
出家する前の俗名は市九郎。物語の始まりは、市九郎が江戸で仕えていた
主人の妾と通じたため、主人に殺されそうになるところから始まります。
菊池寛の文章は、市九郎が斬られても仕方ないと思っていたのに
いざ自分の血を見たら、「殺されるなら殺す」と本能的に反撃に出た
市九郎の心情の変化をスピード感あふれる筆致で書いています。
そうして主人を殺し、女とともに江戸を離れ、数々の犯罪で身を立てる生活。
生活の金のために、人殺しをするに転じた主人公の心の動きと
そして、そのような非道悪行から足を洗おうと決意するに至った心情の変化を
これまた見事に書いていると思います。

出家した主人公が、過去の悪行の罪滅ぼしを求めてさすらい、
辿り着いたのが、一年に10人も人が死ぬという耶馬溪の鎖渡し。
ここにトンネルを開通させることが出来れば、一年に10人の命を救える。
十年で百人の命が救える。
これぞ、自分の罪滅ぼしのために、自分の身命を捨てても実現させるべき事業である!

そうして、狂人扱いされながら、主人公は一人で岩壁に向かう。
孤独に堀リ進める。
一人で掘るのだから、進みは遅い。
何年もかけて、ただひたすら、掘る。誓願にゆるぎなく。

狂人扱いしていた村人たちも、やがてその事業性に気付き、石工を寄進するのだが
そのたびに思うほど進まない仕事に飽きて、石工は気付くと一人また一人と減っている。
それでも主人公は掘り続ける。
また何年か経って、同じことが繰り返される。
やっと18年目になって、トンネルが半分まで掘られていることに気付いた人々は
今度こそこの坊主とともにトンネルを掘り抜くことを決意する。
30人の石工が集められ、工事は見る見る進みだした。

主人公は、長年暗闇の中で掘り続けているため、やせ衰え、視力も失い、死にそうな体になっている。
それでも不屈の精神で、みなが休んでいるときでも、一人掘り続ける。

そこに、主人公がかつて殺した主人の長男が、仇討ちの相手を探し求めた流浪の旅の末、
主人公の目の前に現れる。

そこから先の顛末は、ぜひ本を読んでいただきたい。
短編小説なので、すぐに読み切れる作品です。

読み始める前、きっと作品の中には、耶馬溪の緑濃い自然の情景が
美しい文章で書かれているのだろうな、と期待したのですが、それはあまりありませんでした。
代わりに、その期待をはるかに超えて、人間心理の描写、偉業を成し遂げる驚異の精神、
宗教の懐の深い救い、そういったものが胸に迫り、素晴らしい文学作品に出会えた喜びと
深い感動を覚えることができました。

ぜひとも、耶馬溪の青の洞門に行って見なければならない、という思いを強めることになった作品でした。

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なるほど! 私、よんでみます。
ゆり
2009/08/27 12:27

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